○尿失禁とは?
尿失禁とは自分の意思に関係なく尿が漏れてしまうことです。不快で衛生的な面の問題だけではなく、人前に出るときや外出先での経験では「恥ずかしい」思いをすることがあり、いつ尿が漏れてしまうかと不安のために外出や旅行などを控えることも出てきます。尿失禁は年のせい、と思い相談することを諦めている方が多いですが、たいそうや薬などで改善することも多いため、泌尿器科への受診と相談をお勧めします。
○尿失禁の種類
- 腹圧性尿失禁
- 切迫性尿失禁
- 混合性尿失禁
- 機能性尿失禁
- 溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
・腹圧性尿失禁

咳やくしゃみ、大声で笑う、重いものを持つなどのお腹に力が入ったときにもれるタイプです。 女性に見られる尿失禁としては最も多いのがこのタイプ。これは尿道を支える靱帯のゆるみや骨盤の底をハンモックのように支える筋肉(骨盤底筋)が弱くなって起こり、加齢や出産を契機に出現したりします。荷重労働や排便時の強いいきみ、喘息なども骨盤底筋を傷める原因になるといわれています。 閉経で女性ホルモンの減少のより、尿道のしまる力を低下させることが原因として挙げられます。
・切迫性尿失禁(過活動膀胱)
腎臓で作られた尿が膀胱へたまるにつれて、なんとなく感じる程度から次第に強い尿意を感じるようになります。正常では膀胱内にたくさん尿がためって強い尿意を感じていても、トイレでの排泄準備が整うまで膀胱は動きません。一方、過活動膀胱では、膀胱が勝手に尿を出すように収縮してしまうと考えられています。突然漏れそうな強い尿意を感じ、間に合わず尿を漏らしてしまうことを切迫性尿失禁といいます。高齢に多く見られ、日本人の8人に1人が過活動膀胱であるとされています。
そのほかに脳梗塞やパーキンソン病などの神経の病気、女性では膀胱瘤や子宮脱などの骨盤臓器脱や男性の前立腺肥大症も関係しています。
・混合性尿失禁
腹圧性と切迫性尿失禁の両方を合併することも多く、これを混合性尿失禁といいます。女性に多いのが特徴です。
・機能性尿失禁
膀胱や尿道に異常はありませんが、歩行障害によりトイレまでの移動に時間がかかり間に合わない、認知症のためトイレでの動作を認知できずに尿失禁してしまうことをいいます。 この尿失禁の治療は、介護や生活環境の見直しを含めて、取り組んでいく必要があります。
・溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
自分で尿を出したいのに出せない、でも尿が少しずつ漏れ出てしまうのが溢流性尿失禁です。この溢流性尿失禁では、尿が出にくくなる排尿障害が必ず前提にあります。排尿障害を起こす代表的な疾患に、前立腺肥大症がありますので、溢流性尿失禁は男性に多くみられます。ほかに、直腸癌や子宮癌の手術後などに膀胱周囲の神経の機能が低下してしまっている場合にもみられます。
○治療
- 膀胱訓練
- 骨盤底筋の運動
- 排泄介助
- 薬物療法
- 手術
・膀胱訓練
尿意を我慢し、膀胱の大きさを増加させる訓練法のことで、切迫性尿失禁に有効です。尿意を感じてから排尿するまでの時間を少しずつ延長し、最終的には排尿の時間を2~3時間もたせることが目標になります。
・骨盤底筋の運動
三ヶ月ほど継続することで、腹圧性尿失禁に効果があります。全身をリラックスさせ、肛門や膣を5秒程度引き締め、ゆっくりとゆるめます。おしっこを止めるような力の入れ方をイメージしてください。これを一度に10回程度、1日に3~5セット行いましょう。
・排泄介助
機能性尿失禁の方に有効です。一日の排泄パターンを把握し、失禁が起こる前に排泄を促す、またはトイレ誘導をする方法です。
・薬物療法
膀胱の異常な収縮を抑える薬は切迫性尿失禁に有効です。その他、前立腺肥大症の男性に尿を出しやすくする薬が尿漏れに有効なことが知られています。
・手術療法
女性の腹圧性尿失禁に対して有効です。傷は小さく入院期間も短くすみます。
○まとめ
どのような失禁の仕方かで対処方法も変わってきますので、年齢のせいにして諦めず、まずは泌尿器科へ行って相談してみましょう。